小浜温泉 脇浜温泉浴場(おたっしゃん湯)

基本データ
URL 小浜温泉観光協会 より 脇浜温泉浴場 おたっしゃん湯
住所 長崎県雲仙市小浜町南本町5-2
電話番号 0957-74-3402
営業時間 6:00〜21:00
定休日
入浴料 大人150円、小人70円、幼児30円
泉質 食塩泉
温泉分析書等 泉温:97℃、成分総計:11370mg/kg
(分析年月日:昭和32年10月27日)
備考 備品類無し
訪問日 2004.11.8 / 2010.11.30写真差しかえ

(2004年11月8日)
小浜温泉街では、唯一の民営大衆浴場。

近年、「レトロ」という言葉が巷に氾濫し、一種のブームになっている。しかし、昭和12年(1937年)創業の脇浜温泉浴場の年季の入り方は、つくられたものではない。創業当時のまま使い続けられている木造平屋の建物は、玄関を入ると、一気に戦前の昭和時代に逆戻り。昔ながらの番台に座る置物のような(?)オーナー夫妻、さらには脱衣場の蛍光灯の上にかかる蜘蛛の巣までが絵になってしまう鄙びた佇まいの渋さは、共同湯ファンならずとも、よくぞこんな温泉が小浜に現存してくれているものだと、必ずや感激するであろう。

掛け流されている源泉は、しっかりした感触の極上湯。この日入った小浜の温泉の中で、ここが最も塩味が濃く感じた。



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(2004年11月8日)
気になったのは、「おたっしゃん湯」という通称。最初、場所がわからず、道行く地元のバーチャンに「脇浜共同浴場は、どこですか?」と尋ねたら、「え?あぁ、おたっしゃん風呂のことね。」と返ってきた。どうやら地元では、「おたっしゃん湯」の方が通じるらしい。

帰宅後、小浜温泉観光協会サイトの電子掲示板(※1)で質問してみたところ、「昔、“おたつ”(※2)という人が始めたと聞いています。」と回答してくださった方がいた。インターネットありがたや〜。(※1 現在、このBBSは無い。※2 後述のように、“おたつ”は間違い。“たし”が正。)

(2010年11月30日)
番台には、オーナー夫妻が交替で座っておられるのだが、ご高齢なこともあってか、番台では、ほとんど居眠り、またはテレビをご覧になっていて、客には、とことん無干渉。常連客の方も心得たもので、勝手に番台にお金を置き、脱衣場に上がるのが、この温泉の流儀のようだ。

九州温泉道で再訪したこの日、番台には、ジーチャンが座っておられた。スタンプを貰いながら、お喋りをしていたら、昨年2009年9月に、長崎県の「まちづくり景観資産」に選ばれたのだと、番台奥に置かれているプレートを見せてくださった。「もう70年以上経つとです。古かばっかりで…。」と謙遜されるものの、長年に亘り、この温泉を守り通してこられた自負に溢れる笑顔は、とても誇らしげである。

イマドキこのように大事に使い続けられている古い建物は貴重で、貫禄ありますね、と、しきりに感心していたら、創業当時の「入浴券発賣所」の看板も見てみろ、と、すすめてくださった。「昔は、三銭やったとです。」この看板は、男湯脱衣場にあるため、ふだんは女湯では見られない。今回、脱衣場の通用扉を開けることを特別に許可してもらい、私は、初めて目にすることができた。もちろん、浴室入口の頭上の昭和12年9月22日付「本鑛泉醫治効用」「浴客心得」の木製の額も、歴史を物語る証拠品として、必見であろう。

ちょうど夕刻の訪問となり、浴室は、常連客のオバチャンたちで、大賑わい。ちょうどいい機会だわ、と、あらためて地元の方たちに、「おたっしゃん」とは誰なのか、尋ねてみた。「先代のバーサンの名前よ。この温泉を始めたバーサン。」そのことは、お年寄りは、皆、ごぞんじだった。ところが、先代バーサンの本名は、「“おたつ”だったかい?」「いや、“おたせ”さんじゃなかったかね?」と、まぁ、諸説紛々。創業者の女性が、「おたっしゃん」の愛称で親しまれていたことが、逆に、よくわかるエピソードだろう。

湯上がり、番台で気持ちよく居眠り中のジーチャンを起こして、確認してみた。果たして、本名は、“たし”さんだそうな。現在のご主人は2代目で、「おたっしゃん湯」を始めた“おたっしゃん”こと“たし”さんは、ご主人のお母さんの姉妹、つまり、ジーチャンのオバサンという続柄なんだって。へぇー!
通りには看板が出ている ほんの少し坂をのぼる
正面から まちづくり景観資産
脇浜温泉浴場
登録番号:景資第2-134号
登録年月日:平成22年9月3日
所在地 雲仙市小浜町南本町5-2
所有者:個人

 県内有数の温泉地である小浜温泉街にある唯一の民営大衆浴場である。昭和12年(1937)に建築された木造平屋建てで、現在も開業当時のままの形で営業されている。脱衣所にある木製ロッカーや温泉効用書も開業当時から利用されており、雰囲気作りの重要な要因となっている。
(長崎県HPより、転載)
昭和12年9月22日
「本鉱泉医治効用」
「浴客心得」
昭和12年創業当時の
入浴料金(大人金三銭)
昭和32年「温泉成分」表
これも、十分に年代物…


男 湯


脱衣場奥から玄関を見る
写真右奥が番台
木製ロッカーには
漢数字の番号が並ぶ
脱衣場から浴室への
引き戸も、男湯は木枠
入り口側から、浴室奥を見る
最奥部に、カランと水溜め
浴室奥から、脱衣場側を見る 2槽になったシンプルな浴槽
底には、きれいな色のタイル
男湯の洗い場には
バケツは置かれてない
男女の浴室のつくりは、ほぼシンメトリーなのだが、脱衣場と浴室を仕切る戸が女湯はアルミサッシになっており、木製の引き戸のままの男湯の方が、風情が勝っている。

ちょうど、浴槽の真ん中の仕切り上から源泉が投入されるように配管してあるが、源泉が高温のため、同時に加水されている。よく温まる塩味で、つるつる感も、かなり強い。
浴槽奥から 源泉+水


女 湯


女湯の玄関には、ついたて 番台 番台
脱衣場、男女の仕切り方向 木製ロッカー 漢数字も、味わい深い
浴室入口の扉が
女湯はアルミサッシ
入り口から浴室奥を見る
女湯の源泉投入口には
男湯のような樋は無い
浴槽奥から 浴室奥に、水だめの槽と
バケツが置かれた洗い場
浴室奥から、脱衣場の方を見る 照明は、裸電球が1つ
日没後は、ぼんやり薄暗い
湯気抜きのある天井は、高い



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